相対性理論のほころび掲示板

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「改訂新版 双子のパラドックス」 ケース 0 - 山川

2025/01/12 (Sun) 19:57:37

こんばんは。
新しい問題 (https://relativity2021lw.web.fc2.com/paradox_twin.html) が出題されたようなので、まずその中の「ケース 0」をやってみました。

問題文に書かれていないけど、ブードゥーサイエンス星は赤道面に対して面対称になっていると仮定しました。
それと相対論業界の慣例に従って、「見る」は「自分に固定した座標系で測る」という意味に解釈しました。(文字どおり「目で視認する」という意味にとるなら、光の伝搬時間を考えると話は変わってきます。)

以下、解答です。どうでしょう。
────────────────
Q. 「南子から見ると南子が先に激突し、北雄は後から激突します。逆に北雄から見ると北雄が先に激突し、南子は後から激突します。
 いったいどちらの見方が正しいのでしょうか?
 なお南子も北雄も自由落下なのでどちらも慣性系です。」

A. どちらの記述も正しくない。
正しくは:
南子から見ると北雄が先に激突し、南子は後から激突する。
北雄から見ると南子が先に激突し、北雄は後から激突する。

[考え方]
この場面設定では星の重力が存在している(時空の曲率が0でない)から、打ち上げから激突までの大域的な運動を求めるには一般相対性理論の手法に基づく計算が必要です。考え方や計算方法を工夫して特殊相対性理論の手法だけで求めることは無理です。

ただし局所的な狭い範囲(近距離、短時間の範囲)内のことであれば特殊相対性理論の手法だけで近似的にある程度のことは言えます。すると、激突時刻付近の出来事はおおよそ次のように説明できます。

南子と北雄は完全に対等なので、ブードゥーサイエンス星に固定した座標系で考えれば、打ち上げも同時、激突も同時です。そして、仮にブードゥーサイエンス星が綿菓子のようにスカスカで、墜落した2人がそのまま地面にめり込んでいくと仮定すると、星の中心で2人がすれ違います。
そう考えると、この問題はすれ違う2者にとって互いに相手の時間がゆっくり進む、という事象に帰着します。これは特殊相対性理論の最初のほうで出てくる事例です。

例えば南子の時計で測って南子が12時00分に南極から打ち上げられ、12時30分に落下に転じ、13時00分に南極に激突し、そのまま落下を続けたら13時02分に星の中心に達すると仮定します。北雄についても同様とします。
すると激突時刻付近では、南子と北雄は互いに相手の時間がゆっくり進むように見えます。例えば相手の時間が自分の時間の0.5倍とすると、自分に固定した座標系の時刻座標と相手の時計の時刻を比較すると以下のようになります。
_自分_│_相手_
12時56分│12時59分
12時58分│13時00分 ←相手が地面に激突
13時00分│13時01分 ←自分が地面に激突
13時02分│13時02分 ←星の中心ですれ違う
13時04分│13時03分
地面に激突する時刻は13時00分なので、どっちから見ても自分の激突より相手の激突のほうが先(過去)になります。

本当は星の重力がある(時空の曲率が0でない)し速度が一定でないので、こんなきれいな1次関数にはなりませんが、近似的にはだいたいこんな感じになるでしょう。

※なお、打ち上げから激突までの時間を星に固定した時計で測るとどれだけになるか(そしてそれは1時間より長いか短いか)といった大域的なことは、本問ではそこまで問われていない思ったので計算してません。
(出題されればやるかもしれませんが。)
────────────────
これで合っているでしょうか?

この問題の趣旨は、特殊相対性理論の「観測者に対して動いている物体の時間は、観測者の時間より遅く進む。」という法則の適用範囲をきちんと意識せねばならない、ということでしょうか。つまり本当は
 ① 時空が平坦(時空の曲率が0) ←これは特殊相対性理論自体の適用条件と同じ。
 ② 観測者は慣性系(慣性力が0)
という2つの条件下でのみ使える法則なのに、星の重力があるため①が成り立っていない状況(=一般相対性理論が必要な状況)で誤ってこの法則を使うとおかしな結論になる、ということですね。
(①は宇宙全体が平坦になっている必要はなくて、関係者(観測者と観測対象)の世界線をすべて含むような単連結な4次元領域が平坦になっていればいいですけど。)

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